記憶に眠る 糸と糸


 

私は東京の下町に産まれ育ちました。東京にも伝統を受け継ぐ様々な工芸品がありますが、私の身近にはその様な環境はありませんでした。19歳のある日、木立と木立に何本ものロープを結びつけ、そこにロープを織り込んでいる光景に出会いました。ハンモックを作っていました。一本の糸から作り出す編み物の経験はありましたが、この経糸と緯糸から生み出す世界がとても面白く、心惹かれました。始めて“織る”という行為に出会った瞬間であり、それが生涯の仕事になりました。

独学で勉強を始めた経糸と緯糸の世界でしたが、ある日また不思議な布と出会いました。美しくはないが、何とも言えない表情と温もりを感じる布・・・「裂織」と呼ばれる布であると、骨董市のご主人から教わりました。

物を慈しみ大切にし、最後の最後まで活かす工夫。北国の庶民の智慧から産まれた織物でした。

現代に生きる私の制作する裂織は「よりお洒落に贅沢に!」をモットーとしています。

 

プロフィール


東京都に生まれる 

文化学院卒業

「八丈島織物研究所」主宰中山トヨ氏に手織りを、山崎青樹氏に植物染めの手ほどきを 受ける。

以後独学にて学ぶ

1978年 「日本染織作家展」(社)日本染織作家協会主催 入選佳作賞受賞

草木染手織り紬着物 「あさぼらけ」 

1993年 「アート&ザビニヤード」ジャパンパビリオン招待出品(アメリカ・オレゴン州)

草木染手織作(紬着物・服地・ショール他 藍染作品(絞り染め・板締め)を出品

高機(たかはた)を使用した裂織のワークショップを開催 「第一回伊豆の作家群」出展 (熱海サンクリノ美術館)

1995年 「亜細亜現代美術展」入選(東京都美術館) ~草木染手織紬着物 「明けゆく」 ~

1996年 「亜細亜現代美術展」入選 奨励賞受賞(東京都美術館・金沢県立美術館)

~草木染手織タペストリー 「I Remember The Moon」この頃より草木染糸による手織作品から裂織の作品に移行、現在に至る。

* 銀座煉瓦画廊・銀座ACギャラリー・ヨコハマ赤レンガ倉庫ギャラリー・他日本各地。

自宅工房兼ギャラリー「回廊 瞬」では毎年2月に多くの作家を集めた展示会を主催。小田原市のアートフェスティバルの運営にも関わる。


マリア書房より出版。

布の終わりから始まる物語の数々。

2017年3月10日 中国フリーペーパー「TOKYO流行通信3月号」作家紹介掲載されました。 

2017年12月3日 神奈川新聞特集「iバザール」に、着物リメイク「裂織たむら」が紹介されました。